心の琴線に触れるのは?
- S Mikaze
- 2023年11月17日
- 読了時間: 9分
こんにちは、Mikaze です。
つい先日、木枯しが吹き冬の訪れを告げたようで、背中からすっと身の引き締まる心地になりました。
とはいえ、朝は寝袋のぬくぬく感から抜け出せず、いもむしみたいにもぞもぞすることも多いです。
皆さんは、急な冷え込みに体調など崩されてはいないでしょうか。
ちょうど冷たい風が吹く頃、筆者は長崎県の雲仙岳を登ろうとしていました。
ところが視界も悪くなり、一番暖かい上着を羽織っても身が凍えるほどの寒さだったので登山は断念しました。代わりに、寒風の吹く頂上で売っていたみかんが美味しそうだったので、お土産に買うことにしました。
買った小さなみかんを一口食すと、それが美味しいのなんの。とっても甘くてみずみずしくて、後味はすっきり。豊富なビタミンを摂取した私の体は震えて喜びました。
かくして、雲仙岳の思い出は登山ではなく『みかん』となったのです。
冬はやっぱりみかんが一番ですね。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回紹介するのは滋賀県です。
滋賀県は、思いのほか興味深いものが多く充実した旅となりました。
初めて見る琵琶湖は、海かと思うほど地平線が広がっていたのでビックリしました(笑)
その琵琶湖を囲むようにして、心踊る場所がいくつもありました。
中でも3つほど、特に印象的だったものを紹介します。
それでは、どうぞご覧ください。
1. メタセコイヤの並木道

マキノ町のメタセコイヤ並木
まず最初に紹介するのは、緑豊かなメタセコイヤの並木道です。
滋賀の北部「湖北」に位置する高島市マキノ町。四季を通じて移り変わる自然の堪能できるマキノ高原は、訪れた人々の心を癒してくれます。
そのマキノ高原へ向かう途中、マキノピックランドを縦貫する県道小荒路牧野沢線では、延長約2.4kmにわたりメタセコイアが約500本植えらています。
筆者は、マキノピックランドの駐車場に車を停めて、メタセコイヤ並木をのんびりと散策しました。

メタセコイヤという名前の由来は、樹高が最大115mにも及ぶセコイアに似ていることから来ています。さらに、メタ(変形した)を付け、メタセコイアと名づけられました。原産国は中国、スギ科メタセコイア属落葉高木。和名は「アケボノスギ」です。
セコイア属といえば、中生代から第三紀にかけて生育していた巨大な木ですから、古の香りみたいなものも微かに感じさせてくれます。
ちなみに、並木道のメタセコイヤは樹高が30mほどあります。
これでも充分に大きいです。

上を見上げれば、風に揺られる鮮やかな葉が一面に広がっていて、爽やかな木々の香りに心が安らぎます。
遥か昔の恐竜たちも、こんなふうに空を見上げる時があったのだろうか…
なんて想像を膨らませながら物思いに耽っていました。

陽に照らされた葉っぱが美しいです。
ちいさな芽吹きというのでしょうか、新たな生命が少しずつ生まれて、廻っている姿を連想させてくれました。
2. 黒壁スクエアandとび太くん

黒壁スクエアのオブジェ
お次は、滋賀県長浜市の『黒壁スクエア』。
北国街道沿いに続く古い街並の一角を総称してこう呼ばれています。
明治時代から黒壁銀行の愛称で親しまれた古い銀行を改装した『黒壁ガラス館』を中心に、ガラスショップや工房、ギャラリー、体験教室、レストランやカフェなどの素敵なお店が、古い街並の中に点在しています。
筆者が雑貨屋さんで見つけたのは、ガラスで作られたどんぐりのネックレス。それから、ステンドグラスのような透き通った美しい色合いのイヤーカフ。
おもわず一目惚れして買ってしまいました。久しく友人と会う時などの大切な日に身につけようと思います。

風鈴が揺れるトンネル
ここは確かオルゴール館の辺りだったでしょうか…
路地の隙間に隠れるようにして、無数の風鈴に囲まれたトンネルがありました。

なるほど、風鈴とはこのような楽しみ方もあるのか、と新たな発見ができました。
夏に涼しさを運んでくれるものですが、内側に橙系のドライフラワーが飾られ、優しい紫の色とクリスタルのキラキラもあいまって今度は秋の風を運んでくれているようです。
飾った方のセンスの良さを感じます。
この後、『海洋堂フィギュアミュージアム黒壁 龍遊館』と『成田美術館』に行ってきました。
フィギュアミュージアムは偶然に興味がそそられて入ったのですが、思いのほか見応えがあって非常に面白かったです。
精巧につくられたカッコいいフィギュアや、こんなもの売ってたの!?と思うようなガチャガチャの小さなフィギュアコレクションがずらりとありました。
これは、むしろ子供よりも大人がワクワクしてしまうのではないかと思わせるコレクションです。
成田美術館は、近代ガラス工芸家の中で、世界で五本の指に入るルネ・ラリックの作品を収蔵・展示する関西唯一の美術館です。
コレクションの数は多いものではなくてこぢんまりとしていましたが、一点一点のアール・デコ様式の彼の作品は非常に興味深いものでした。
細部にモチーフとなった動物や植物の造形、作品のシルエットや色味も美しく、筆者は恥ずかしながら初めて彼を知ったのですが、すっかり魅了されてしまいました。
また、館長の成田光子氏が丁寧に解説や案内をしてくださるところも良かったです。

まるい食パン専門店『つるやパン』
そして、ちょっと小腹がすいたのでパン屋さんに足を運びました。
まるい食パン専門店の『つるやパン』さんです。
可愛らしいまるいフォルムの、ふわっふわの食パンを使った惣菜パンや菓子パンを製造・販売されています。
筆者は定番の焼きそばパンを買いました。価格もお手頃です。
ふらりと立ち寄ったおばさんたちが、「ここのサラダパンが美味しいのよねー!」と噂していたのでサラダパンも買って食べてみました。
サラダパンとはなんぞやと思ったのですが、コッペパンに挟まれた小さなたくあん(?)と謎のソースが絶妙に美味しくて、クセになる味でした。
そしてパン生地もふわっふわ!
ここでもまた新たな味覚に目覚める筆者でした。

飛出とび太くん
それから、『つるやパン』さんの店前でかけっこポーズをとったこの看板…
とび太くん (本名:飛出とび太)。
実は、飛び出し坊やの発祥は滋賀県。
筆者はこの少年を、滋賀県の旅で幾度となく見かけることになるのです。

例えば、こんな風情ある町並みの広がる近江八幡市の為心町。

ひときわ目立つ白い建物、白雲館という、擬洋風の明治に建てられた校舎(現在は歴史博物館)があります。
その向かいの白雲橋から飛び出そうとしている少年、とび太君。
学生服姿に身を包み、青春のノスタルジーを感じさせるあどけない表情です。

こちらは、どこか分かりますか?
ちょんまげがトレードマークで、Tシャツには “AZUCHI CITY”と書かれていますね。
そう。安土城の城跡です。
城門前の駐車場にいました。
よくみると、足袋も履いているじゃないですか。
熱狂的な織田信長ファンのとび太くんですね。
それから、とび太くんは車を走らせていると神出鬼没に姿を現しました。
『安土城考古博物館』の館内や、道の駅のお土産売り場など…
そして、お肉屋さんの前のとび太くんは頭にニワトリが乗っていたりと、どれもこれも個性的。
信長の館で、とび太くんがじょうずに描ける!テンプレートが売っていたので、思わず買ってしまいました。
これで、幾らでも飛び出すとび太くんが描けますね。

安土城跡の石段
その後、筆者はこれでもかというほど石段に登るのでした。
城跡の石段はぐるっと回っても1時間はかかります。
これは侵入者を疲れさせるためか、非常に入り組んだ構造の内部を登って、さすがは信長…と感嘆せざるを得ません。
この城跡だけならまだなんとかなるでしょう。
しかし、筆者は前日に長命寺の808段の石段を登っていました。
さすがに足が悲鳴を上げました。(長命寺は登ると素晴らしい景色が広がる素敵なお寺です。登って後悔なし)
そしてさらにこの後、石馬寺などの神社・仏閣巡りで歩く修行をするのでした。
まったく、どうして立派なお寺や神社は石段が多いのだろう!
ちなみに一番きつかったのは、山形県の羽黒山の出羽三山神社です。
もはや山登りよりもきついかもしれません。

仁王門
城跡のなかでも特に筆者が気に入ったのは、この仁王門です。
信長公が天正年間に甲賀から移したのだとか。
厳かな雰囲気で屋根瓦は苔むしており、ひっそりと佇む姿が印象的です。
眼下には木造の金剛二力士立像があり、楼門とともに国の重要文化財に指定されています。堂々とした様に魅了されました。
3. 弁天池の沈み鳥居

水口町の大池寺
さて、所変わって滋賀県を南下しまして、甲賀市水口町にやってきました。
ここには大池寺という立派な庭園のあるお寺が所在しています。
目指すべきは、このお寺の奥、弁天池という池にありました。

大木の浮かぶ弁天池
しばらくは、果たしてここで合っているのだろうか?という不安を少し抱きながら、池の淵に沿って草に埋もれた道を歩いていきます。
弁天池は、波音も立たぬような静かな佇まいでした。
途中、池に浮かぶ大きな木を見かけました。

鳥居が見えてきた
少し太陽の光が降り注いできて、茂みの向こうに灰色の鳥居が浮かんでいるのが見えました。
おお!素晴らしく幻想的です。
しかし、こちらは木々が視界を遮り、向こう側は住宅街が軒を連ねています。
写真に収めるのはどうも難しい…

鳥居の先へ近づくことを許さない神の領域とでもいいましょうか…
それでも、池を覆い尽くしたハスの葉の間に、ぽっかりと半分ほど沈み込んだ鳥居は、違う次元の世界から現れたような異様さがあります。

先まで歩いていくと橋が架かっていまして、そこからは鳥居がよく見えました。
ここが限界のようです。
きっと、時期や時間帯によってはもっと美しく映える一枚が撮影できるでしょう。
大池寺は天平年間(729-784年)に諸国行脚の高僧・行基がこの地(滋賀県甲賀市水口町名坂)を訪れた際、日照りに悩む農民のために灌漑用水として「心」という字の形に4つの池を掘り、その中央に寺を建立したと伝えられているらしいですが、現在、大池寺の周囲は「名坂大池寺自然公園」となっていて、これらの池の所有者は「名坂区」であり、鳥居は大池寺のものではないとのことでした。
詰まる所謎に包まれた鳥居で…一体誰が何のために建てたのか、とても気になりますね。
ここまで沈み込んだ鳥居は初めてみたのですが…
周囲の空気感もあっていっそうに不思議な心地がしました。
まとめ:心の琴線に触れる旅路

さて、今回は滋賀県の旅の一コマをご紹介しました。
目指す目的地を調べる際、筆者はよく道の駅のパンフレットやグーグルマップを使うのですが…やはり行ってみないと分からないものですね。
予想以上に素晴らしい光景に出会えたり、思ったよりもショボかったり、はたまた天候によって見え方も違ってきます。
特に感じるのは、その時々ですれ違う人々の印象です。
彼らは観光客ではなく、普通にここで生活している人たちで、彼らの日常を少しばかり垣間見るわけです。そんな時、自分がもしその日常に溶け込んでいたらどんな生活をしているだろうか?などと考えを巡らせてみます。
その時の印象によって、この街は良かったなあとかそんな記憶が残ります。
滋賀県では、とび太くんといったユニークな少年や、森の深い寺に延々と続く石段、石に刻まれた書体の美しさ…などといった細かいところが琴線に触れて、よく心に残っていました。
果たして、次に訪れる街ではどんな印象を受けるだろうか?
どんな新しい発見が待っているだろうか?
楽しみが尽きないです。
それでは、ここら辺で。
また次回お会いしましょう。
参考URL:
琵琶湖汽船 メタセコイア並木
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しが 県博協 成田美術館
日本秘境探訪 弁天池の沈み鳥居
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