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再訪の京

  • 執筆者の写真: S Mikaze
    S Mikaze
  • 2023年11月30日
  • 読了時間: 9分

 こんにちは、Mikaze です。


 もうすぐ師走。月日が経つのはあっという間ですね。

 こう感じるのは、太陽が沈むのが早くなったからでしょうか。


 さて今回ご紹介する旅路は、京都府です。

 筆者は、修学旅行や普通の観光旅として何度も訪れたことがあります。

 ひとり旅で新幹線と電車を乗り継いで遊びに行ったことも。


 しかし、この度は自家用車を走らせてきました。ちょっと感覚が違います。

 京都の主要な観光地ではなく、ちょっぴりマイナーなスポットに足を運んでみました。


 本当は京都の中心地にも行きたかったのですが…

 筆者は体調を崩してしまったため、その辺は全部すっ飛ばしてしまいました。


 それでも充分に濃厚な旅になったと思います。

 なぜかと言いますと、素敵な穴場に巡り合うことができたからです。


 今回は、その中でも4つほどご紹介します。


 それでは、どうぞご覧ください。



. 北山大台杉


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                                   北山杉の里 中川の石板


 まず訪れたのは、かの有名な金閣寺よりもっと北側、山奥深くへと進んだ場所にある京都市北区中川です。


 周山街道から脇道に逸れ、緑深き小さな集落の中へ。

 ここに北山大台杉という一風変わった大杉があると聞きつけてやってきました。


 道が細いので、車は集落の入り口付近にあった草むらに停め歩いて向かいました。



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 しばらく歩いていると、忽然と真っ直ぐに伸びた幾つもの立ち木が現れました。


 まるで異世界に迷い込んだような不思議な心地がします。

 普段見慣れていないからというのもありますが、特にこの姿形がなんとも形容しがたい面白さなのです。



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                            北山大台杉が現れた


 そして現れました、北山大台杉…

 のシルエット。


 完全に影に潜む形でしたが、堂々たる出で立ちです。

 思わず心の中で「おお」と叫ぶくらいの威厳があります。


 ぐるりと周ってみます。



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 ちょっと全貌が見え始めました。


 この大台杉は、地上から1m前後の高さのところ(台)から、多くの立ち木が林立しているのが特徴です。樹齢400年と推定され、当地域で最古かつ最大です。



 ここで、北山杉の背景を少しご紹介しますね。


 京都市の北区中川を中心とした北山林業の地域は、古くから朝廷や寺院の所領として営まれ、木材や薪炭、松明、菖蒲などを納めていました。急峻な山々が連なる北山では平地が少なく、わずかな土地に点在する集落では、田畑よりも山林の資源を収穫する「山稼ぎ」(林業) が生業になっていたそうです。


水が豊かで冷涼な北山の里では、特に杉の木を育てるには適した地です。

 筆者が散策していると、山の随所から綺麗な水の流れる音がしてきました。


 しかし、平安京造営の頃から木材生産がさかんだった山国地方などと違い、木材を流して運べる広い川がなく、大きな木を運び出すのは困難な場所だったそうで。

 その一方、都まで山道を歩いていくと半日ほどで一往復できる立地にあり、人力でも運べる小さな木にいかに付加価値をつけるか、ということを昔の人たちは考えていたのではないでしょうか。


 この北山大台杉は、山稼ぎを生業としたこの土地の人々の、知恵の結晶なのですね。


 現在では、茶室や数奇屋建築で用いられる細い化粧垂木を生産するために育てられていますが、古くは床柱のような太い磨き丸太も、この方式で生産されていたそうです。



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 台のところから四方に出ている枝(とり木)を残すことによって、台の上の立ち木を伐採しても、次から次へと新しい芽が出てきて次の世代が育つので、植林をする必要はないです。

 一本の木で森をつくるように循環させることで、効率的な生産ができるわけですね。


 しかし、このようにして木材を生産する方法は、クヌギやナラなどの広葉樹では容易ですが、杉などの針葉樹では、極めて難しいのだとか。

 真っ直ぐに伸び、しっかり育ち続けてくれる遺伝子を持った木が必要です。それが、「シロスギ」でした。

 例えば、中川八幡宮にある母樹は、500年を超えても樹形が崩れず、真っ直ぐに伸びています。この木から挿し木で増やしたシロスギの子孫たちが、台杉の風景をつくっています。 


 こうした方法によって針葉樹から木材が生産されているのは、世界で唯一ここ中川の地だけであるといわれており、しかも400年以上も前に考え出されたのは、驚嘆に値する___

 と、目下の木版には書かれておりました。



 この立派な北山大台杉ですが…

 迫力を皆さんにお伝えできるような全景を映すのが難しかったので、一部分を切り取って、三葉ほど写真を撮ってみました。



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                                        大台杉の景観






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 そして北山大台杉を越えた先には、まだ新芽のような鮮やかな緑の立ち木が傾斜に沿って植えられています。

 早朝でしたが、ここで生活している人々にすれ違うと、優しく挨拶をかけてくれました。




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                                      中川の木道倉庫群


 ちなみに、集落の川岸まで降りていくと、木造倉庫群が立ち並んでいます。

 崩れそうな箇所もあって、人が住んでいるのかは判別がつきませんでした。






. 琴滝


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                               京丹波町の琴滝


 次に紹介するのは、北区から西へ向かって、船井郡京丹波町にある琴滝


 余談ですが、京都-兵庫辺り一帯は丹〇〇という地名が多いですね。

 言葉の響きが意外と嫌いじゃないです。


 話を戻しまして、この滝の何が素晴らしいかといいますと、

 その名に相応しく、琴が静かに鳴り響くような流れ姿です。


 高さ約43mの1枚岩の上部から流れ落ちる、落差約40mの水が、13弦の琴の糸のように見えることから「琴滝」と呼ばれています。京都の自然200選にも選ばれています。




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                            岩に浸み入る琴滝


 これが、自然が創り出した造形とは実に見事なものです。

 以前に静岡の白糸の滝でも触れましたが、滝には豊かな個性が存在しています。

 この滝は迫力あるものではなく、静寂に包まれた孤高の美しさがあります。




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 マイナスイオンを全身で浴びて、心の浄化されるひと時を過ごすことができました。






. 京丹後の金刀比羅神社


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                                    金刀比羅神社の亀の池


 次に紹介するのは、京丹後市峰山町の金刀比羅(ことひら)神社です。


 さあ社殿へ向かおうと、ふと池に架かる橋の袂を見下ろすと、亀たちがわらわらといてびっくり。



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                                        亀がいっぱい


 僕が上だ!とばかりに石の上に登って辺りを見渡す亀の動きが、超かわいい。


 すぐ側の社務所で、亀の餌が売っていたので買いました。

 帰りに亀に餌をやると、大きな亀もちいさな亀もわらわらと寄って集り、頑張って餌を食べようと近づいてくるので、思わず顔が綻びました。




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                                境内社の木島神社・猿田彦神社


 石段を登ると出迎えてくれたのは、二匹の狛犬ならぬ狛猫




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 これは初めて見るな…と思っていたら、木版に「日本で唯一」と書かれています。

 めずらしいものに巡り会えました。


 案外ひょうきんな顔をしており、これまた可愛らしいです。

 仔猫を抱いている姿もまた良き。



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 こちらは口を閉じていますが、にっこり微笑んでいるような気がします。



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                                     金刀比羅神社の本殿


 本殿は厳かな佇まい。

 金刀比羅神社について調べてみると、全国各地に所在していることが分かって驚きました。

 この京丹後市の金刀比羅神社は、文化8年(1811年)、峯山藩7代藩主であった京極高備の命により創建されました。祭神は大物主神(おおものぬしのかみ)です。

 家内安全、商売繁昌、交通安全、開運厄除、大漁満足、海上安全、学業成就、病気平癒、安産などの神徳を有し、丹後一円から信仰を集め、地元では親しみを込めて「丹後のこんぴらさん」と呼ばれています。


 ただ神社に参拝に行くというだけなのに、それ以上に心がたんまりと満たされる時間を頂いた気がします。






. 五色浜


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                                   五色浜園地にやってきた

所変わってやってきたのは、見晴らしの良い浜辺です。

 京丹後市網野町塩江の五色浜です。


 五色とは何が五色なんでしょうか?


 その秘密を探ってみましょう。



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 丘を降りて波打ち際に行ってみると、なんだか不思議な色をした海が。


 うーん、青、赤…黄色?


 これが五色でしょうか。見方によって色々な色に見えるフクザツな色合いです。


 この五色浜は、色とりどりの美しく磨かれた小石からできています

 宮津藩で天保12年(1841年)に発行された地理書『丹哥府志』にはこのように書かれています。


……小石の浜あり、其石或は青、或は白、或は赤、或は黒、或は一石に二色三色五色を帯たるものあり、俗に五色浜と云 …


 この場所がその五色浜なのですね。

 色とりどりの小石が見られることが、五色浜の地名の由来になっています。



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 五色浜に見られる波食棚(波の力によってつくられた平坦な岩場)は規模が大きく、幾重にも重なった地層や波で洗われた奇岩、地名の由来ともなったカラフルな磯が特徴的です。

 この浜は、山陰海岸国立公園のなかでも特に優れた景観として、海域公園の指定も受けています。

 昭和2年(1927年)の北丹後地震時に約50cm隆起した波食棚やノッチ(波食窪)も残っており、地震による地殻変動の大切な記録者ともいえます。



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 ちょっと面白い形をした木が生えていました。




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 これがノッチというものですね。




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 足元を見ると、下は結構深さがありそうです。

 岩礁が何層にも重なっているように見えます。



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 この近辺のヒロイソ、田尻などの波食棚は日本海ができたころの激しい火山の噴火で発生した火砕流や土石流で運ばれてきた土砂の地層でできています。

自然の荒々しい所業がこのいびつな景観を創り出したのですね。


 波食棚の上でも五色の丸い小石が見つかることがあるとか。

 五色浜と同様、背後の山をつくる地層から落ちてきたものです。

 


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 上に乗っかっている木々たちの形も面白いです。


 波打ち際の木って、風に煽られているためか凄い曲がりくねった奇形をしていたりしますよね。

 筆者は昔、石川県の珠洲市という場所に行ったことがあるのですが、そこも大分曲がっていて面白かったのを思い出しました。


 興味がある方は、こちらの記事をご覧ください。




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 丘に戻って散策していると、何やら石がゴロゴロと連なっている場所が。




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 頭の中がパニックになるような様々な石が転がっているではありませんか。


 五色浜の小石には、周辺の山をつくる流紋岩、安山岩、凝灰岩などのほか、丹後では見られないチャートの石もあります。

 また、浜の背後の大きな崖をつくる地層の中にも同じ種類の小石があります。五色の石は、この崖から落ちてきて波で洗われたものなのです。

 このうちチャートは今、大江山よりも南でしか見られません。2000万〜1500年前に日本海がつくられた頃、運ばれてきたのでしょう。


 これは、石好きにはたまらない場所ですね…



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 先まで歩いていくと、チャート(?)の石が沢山敷き詰められていました。

 誰かがつくった道みたいになってますが、どうなんでしょうか。






まとめ:再訪の中の発見


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 如何でしたか。


 京都といえば、数々の有名どころが出てくると思いますが、ガイドブックに載ってないような素敵な場所を見つけられたのは嬉しい発見でした。

 また、筆者はいつも自然の景勝地に行くことが多いのですが、京都では特に人のつくり出した景観の魅力にも触れることができた点が大きな収穫といえます。

 何度訪れても、一向に飽きのこないのが不思議ですね。


 電車旅やバス旅、バックパックの徒歩旅など、移動手段によって行動範囲は限られてくるとは思いますが、一風変わった場所を訪れてみるのも面白いかもしれません。


 それでは、また次の旅でお会いしましょう。





参考URL:

京都北山丸太生産共同組合 北山杉story

じゃらん 琴滝

ウィキペディア 金刀比羅神社(京丹後市)



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